AIを使える業務の見つけ方|15分でできる業務棚卸し5ステップ

AI業務棚卸しシートに書く9項目

AIを仕事に使いたいと思っても、「自分の業務では何に使えるのか」が決まらず、ツールを開いただけで止まることがあります。便利そうな機能から探すと、普段の仕事と結びつかず、かえって確認や修正の手間が増えがちです。

最初に行いたいのは、AIツールの比較ではなく、普段の業務を小さな作業へ分けることです。たとえば「顧客対応」ではなく、「問い合わせを読み、確認事項を整理し、返信の下書きを作る」と分ければ、AIへ任せる部分と人が判断する部分が見えます。

この記事では、自分の仕事からAIを試す候補を1つ選ぶための、15分の業務棚卸しを紹介します。15分で行うのは、個人または小規模な範囲での簡易整理と候補の仮選定です。全社の業務調査、費用対効果の検証、セキュリティ審査まで終える方法ではありません。

ツールを使っても仕事が楽にならない場合は、AIで効率化できない原因と改善方法も参考にしてください。

執筆者(佐藤大地)
だいちゃん_素材

取得資格

  • SEO検定1級
  • SEOマーケティングアドバイザー

2020年からブログを始めて、エンタメ系のジャンルは約1年で月間10,000PVほど。2021年にWebライターとして独立しSEOメディア運用ディレクターとして現在も活動中。田舎に戻りHP製作やSNS運用マーケティング支援なども対応。

目次

AI業務棚卸しシートに書く9項目

AI業務棚卸しシートに書く9項目

業務名だけを並べても、AIを使える部分は見つけにくいものです。1つの業務について、次の9項目を記録します。

項目書く内容記入例
業務名作業が想像できる名前問い合わせメールの返信
きっかけいつ作業が始まるかお客様からメールが届く
入力作業前に受け取る情報質問内容、料金表、空き日程
作業実際に行う手順内容確認、回答整理、文章作成
成果物作業後にできるもの返信メール
頻度週・月に何回あるか週5回
1回の時間おおよその所要時間15分
困りごと時間がかかる理由書き出しと敬語で迷う
情報・影響機密性、間違えた場合の影響顧客情報あり、送信前確認が必要

「頻度」と「1回の時間」がわからなければ、正確な計測を待たずに、おおよそで構いません。候補を選んだあと、実際に試す作業だけ計測し直します。

特に重要なのは、入力・作業・成果物を分けることです。AIに任せる対象は、業務全体ではなく「質問を3点に整理する」「返信の下書きを作る」など、一部分になることが多いためです。

15分でAIを使える業務を見つける5ステップ

15分でAIを使える業務を見つける5ステップ

15分の使い方は、次の5ステップです。

  1. 対象範囲を決める|2分
  2. 繰り返す業務を5〜10個書く|4分
  3. 入力・作業・成果物へ分ける|3分
  4. 6つの評価軸で候補を比べる|3分
  5. 最初に試す業務を1つ選ぶ|3分

1. 対象範囲を決める|2分

「会社の全業務」のように広げず、自分が担当する仕事、午前中の事務作業、毎週繰り返す作業など、範囲を一つに絞ります。

目的も一つだけ決めます。「文章作成の時間を減らす」「確認漏れを減らす」「繰り返し入力を減らす」など、何を改善したいかを書いてください。目的が違えば、選ぶ業務も変わります。

2. 繰り返す業務を5〜10個書く|4分

カレンダー、送信済みメール、請求書、タスク管理表などを見ながら、直近1週間または1か月に行った作業を書き出します。

最初から漏れなく出そうとせず、繰り返し発生する業務を優先します。「メール対応」ではなく「問い合わせ内容の確認」「返信の下書き」「日程候補の提示」のように、成果物が一つになる粒度で書くのがポイントです。

3. 入力・作業・成果物へ分ける|3分

候補の中から時間がかかっている3件を選び、入力・作業・成果物へ分けます。

たとえば記事制作なら、入力は取材メモと参考資料、作業は構成整理と執筆、成果物は記事原稿です。さらに「取材メモを論点別に整理する」「表記揺れを探す」と分けると、AIを試す範囲を限定できます。

4. 6つの評価軸で候補を比べる|3分

次の見出しで紹介する、頻度、時間、言語作業、判断、データ、リスクの6軸で3件を比べます。

すべてを点数化する必要はありません。「頻度が高い」「文章を扱う」「正解を人が確認できる」「機密情報を使わず試せる」の条件が揃う業務を探します。

5. 最初に試す業務を1つ選ぶ|3分

最初の候補は、最も大変な業務ではなく、小さく試せて、失敗しても業務や顧客への影響が少ない作業から選びます。

「返信メールを自動送信する」ではなく「架空の問い合わせで下書きを作る」、「売上表をAIへ丸ごと渡す」ではなく「ダミーの表で関数候補を作る」といった試し方です。試す前に現在の所要時間と確認項目を記録しておくと、導入後の変化を比べられます。

AIを使える業務か判断する6つの評価軸

AIを使える業務か判断する6つの評価軸

AIに向くかどうかは、「文章作業だから」の一条件だけでは決まりません。次の6軸を組み合わせて判断します。

評価軸確認する質問最初の候補にしやすい状態
頻度週・月に何回発生するか繰り返し発生する
時間1回と月合計でどれくらいかかるか短縮効果を確認できる
言語作業読む、書く、要約、分類が含まれるか一部分が文章・情報整理である
判断の重さ正解が一つか、人の判断が必要かAIは案を出し、人が確認できる
データ必要な情報を安全に用意できるか公開情報・ダミー情報で試せる
リスク間違えた場合に誰へ影響するか外部へ出す前に止めて確認できる

NRIの生成AI活用に関する資料でも、対象業務の内容と課題を整理し、想定効果、生成AIによる出力の実現性、データの取得可否を主要項目として簡易評価する流れが示されています。NRI「生成AIのビジネス活用実現に向けた羅針盤」

候補を選ぶときは、効果が大きそうかだけでなく、安全に入力できるデータがあるか、出力の良し悪しを自分で判断できるかも確認してください。

AI業務棚卸しの記入例と整理プロンプト

AI業務棚卸しの記入例と整理プロンプト

ここでは、個人事業主の架空例を使って次の2点を確認します。

  • 5つの業務をどのように分類するか
  • 完成した棚卸し表をAIへ相談するときに何を伝えるか

個人事業主の業務棚卸し例

業務頻度・時間困りごと情報・影響最初の判断
問い合わせ返信の下書き週5回・各15分書き出しで迷う顧客情報あり、送信前確認が必要ダミー情報で下書きから試す
打ち合わせメモの整理週2回・各20分決定事項が散らばる未公開情報を含む匿名化できる範囲だけ試す
記事の誤字脱字確認月4本・各30分自分では見落とす公開前原稿一部分で指摘抽出を試す
請求書の金額確定月10件・各10分転記がある金額誤りの影響が大きいAIより既存システム・関数を検討
契約条件の最終判断月2件・各30分条件が案件ごとに違う法的・取引上の影響が大きい人が担当し、必要なら専門家へ確認

メール返信を試す場合は、ChatGPTでメール返信を下書きする方法を参照してください。表計算ならChatGPTでスプレッドシート関数を作る方法、記事確認ならAIで記事を校正する方法で具体的な手順を確認できます。

棚卸し結果を整理するプロンプト

AIには、最終決定ではなく、候補の比較と確認漏れの指摘を依頼します。

以下は、AI活用を検討するための業務棚卸し表です。
この情報だけを使い、最初に試す候補を3件以内で整理してください。

【評価する観点】
・発生頻度と現在の所要時間
・文章作成、要約、分類など生成AIが補助しやすい作業が含まれるか
・必要なデータを安全に用意できるか
・出力を人が確認できるか
・間違えた場合の影響を小さくできるか

【出力形式】
「候補業務」「AIに任せる一部分」「人が確認する項目」「想定リスク」「最初の小さなテスト」の5列の表にしてください。

【守ること】
・AI導入を前提にしない
・関数、既存システム、RPA、業務廃止の方が適する場合は明記する
・情報が足りない場合は推測せず、追加で確認する質問を出す
・最終判断はせず、候補と理由だけを示す

【業務棚卸し表】
ここに、機密情報を除いた棚卸し結果を貼り付けます。

AIが出した優先順位は仮説です。実際の所要時間、会社のルール、使用するサービス、確認者、間違えた場合の影響を人が見てから、テスト対象を決めます。

棚卸した業務をAI・人・既存ツールの4つに分ける

棚卸した業務をAIと人と既存ツールの4つに分ける

棚卸しの目的は、すべての業務へAIを使うことではありません。候補を次の4つに分けると、手段の選び間違いを減らせます。

分類向いている業務次の行動
AIで小さく試す言語作業、繰り返し、結果を確認しやすいアイデア出し、要点整理、見出し案ダミー情報で一部分を試す
AI+人で分担する外部へ出す文章、正確性が必要返信下書き、記事校正、議事録整理人の確認項目と承認者を決める
既存ツールを使う手順や正解が固定される集計、転記、定型通知関数、標準機能、RPAを比較する
人が担当する最終判断、高リスク、現場対応契約承認、採用判断、対人交渉AIは参考情報に限定する

NIST AI RMFでは、AIが支援する具体的なタスク、利用範囲、人による監督、役割と責任を定義する考え方が示されています。NIST「AI RMF Core」

「AIを使う業務」と決めるだけではなく、AIがどこまで担当し、誰が何を確認するかまで仮置きしてください。本格的な業務フローは、試した結果を見てから設計します。

AI業務棚卸しで避けたい5つの失敗

AI業務棚卸しで避けたい5つの失敗

業務を一覧にしても、候補の選び方を誤るとAI活用へつながりません。特に避けたいのは次の5つです。

  • 「営業」「経理」のような大きい単位で止める
  • AIを使う前提で手段を決める
  • 最も困っている業務から選ぶ
  • 機密情報や影響範囲を確認しない
  • 試す前の時間と品質を記録しない

1. 「営業」「経理」のまま書く

部署名や職種名では、入力と成果物が見えません。「商談後のメモを整理する」「入金予定日を一覧へ転記する」など、1回で一つの成果物ができる単位へ分けます。

2. AIを使う前提で考える

不要な業務は廃止し、同じ入力は統合し、正解が固定される処理は関数や既存システムを検討します。「AIが使えそうか」より先に、「この作業は必要か」「もっと単純な方法はないか」を確認してください。

3. 最も困っている業務から選ぶ

負担が大きい業務ほど、例外や関係者、判断が多い場合があります。最初は成果が小さくても、短時間で試せて、良し悪しを自分で判断できる業務を選ぶ方が、AIの得意・不得意をつかみやすくなります。

4. 機密情報や影響範囲を確認しない

顧客情報、契約、未公開の売上、社内資料などを、許可なくAIへ入力してはいけません。匿名化できるか、公開情報やダミー情報へ置き換えられるか、使用するアカウントと会社のルールに問題がないかを先に確認します。

IPAのガイドラインでも、生成AIの導入、運用、リスク管理、利用ルールの文書化が分けて扱われています。IPA「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」

5. 試す前の時間と品質を記録しない

AIを使ったあとだけ時間を測っても、以前と比べて改善したか判断できません。テスト前に、1回の時間、手戻り、確認項目、完成条件を簡単に記録します。

AIへ入力する準備、出力の確認、修正まで含めて比較してください。生成時間だけ短くても、確認が増えていれば業務全体は効率化していません。

AIの業務棚卸しに関するよくある質問

AIの業務棚卸しに関するよくある質問

AIを使う業務を棚卸しするときによくある疑問に答えます。

  • 本当に15分で業務棚卸しができるか
  • 一人でも実施できるか
  • 棚卸し表をAIへ入力してよいか
  • AI適性を点数化すべきか
  • どのくらいの頻度で見直すか
本当に15分で業務棚卸しができますか?

15分で行うのは、自分または小規模な範囲の業務を5〜10個書き出し、最初に試す候補を仮選定するところまでです。全社の業務量、費用対効果、法務・セキュリティ、関係者の役割まで確認する場合は、別途ヒアリングと検証が必要です。

一人でも業務棚卸しを実施できますか?

自分が担当する業務なら一人で始められます。ただし、前後の工程を他の人が担当している業務は、入力元と成果物の受け手にも確認してください。自分の作業だけ短くなっても、後工程の確認が増える場合があります。

棚卸し表をそのままAIへ入力してもよいですか?

顧客名、担当者名、売上、契約、未公開情報などが含まれる場合は、そのまま入力しません。業務名を一般化し、数値を概算またはダミーへ置き換え、使用するサービスと所属先のルールを確認してください。

AI適性は点数化した方がよいですか?

候補が多い場合は比較しやすくなりますが、合計点だけで決める方法はおすすめしません。高頻度で時間がかかる業務でも、間違えた場合の影響や情報リスクが大きければ、最初のテストには向かないためです。点数とコメントを併用します。

業務棚卸しはどのくらいの頻度で見直しますか?

新しいツールを契約したときだけでなく、業務量、担当、サービス、ルールが変わったときに見直します。小さなテストを終えた時点でも、実際の時間と手戻りを記録し、次の候補を選び直してください。

まとめ|AI業務棚卸しは1つの作業を選べれば十分

AI業務棚卸しで最初の1作業を選ぶまとめ

AIの業務棚卸しでは、最初からすべての仕事を整理する必要はありません。対象範囲を絞り、繰り返す業務を5〜10個書き出し、入力・作業・成果物へ分けます。

候補は、頻度と時間だけでなく、言語作業か、出力を人が確認できるか、安全なデータを用意できるか、間違えた場合の影響を小さくできるかで比較してください。

最初に試すのは、低リスクで良し悪しを判断しやすい一部分です。AIへ丸ごと任せず、AIで試す、AIと人で分担する、既存ツールを使う、人が担当する、の4つに分けると実務へつなげやすくなります。

AIを仕事で試しながら学ぶ全体像は、AIを独学するロードマップで紹介しています。候補を実際に試す場合は、メール返信、スプレッドシート関数、記事校正など、成果物が一つの作業から始めましょう。

まず15分のタイマーを設定し、直近1週間に繰り返した業務を5つ書いてください。棚卸しのゴールは、AI化する業務を増やすことではなく、次に安全に試せる1つを選ぶことです。

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