「あの人しか分からない業務」を抱えたまま、その人の異動や退職が近づいてくる。慌ててマニュアル化を指示するものの、書いても書いても終わらない——中小企業でよく起きる状況です。
結論から言うと、属人化の本質は手順ではなく判断にあります。だから、手順書をどれだけ厚くしても解決しません。この記事では、マニュアルで解ける部分と解けない部分を切り分け、仕組み側で解くという選択肢を紹介します。

取得資格
- SEO検定1級
- SEOマーケティングアドバイザー
2020年からブログを始めて、エンタメ系のジャンルは約1年で月間10,000PVほど。2021年にWebライターとして独立しSEOメディア運用ディレクターとして現在も活動中。田舎に戻りHP製作やSNS運用マーケティング支援なども対応。
効率化した人ほど、抜けられなくなる

実際に寄せられている相談に、次のようなものがあります。
ある部署で、担当者がExcelのマクロを使って業務を次々と効率化した。ところが異動が決まったとき、同じスキルを持つ人が部署にいない。上司からは「何かあったときに修正できるよう、全パターンをマニュアル化してほしい」と求められた。しかし、全パターンを書き切ることは現実的ではない——という内容です。
皮肉なことに、効率化を進めた人ほど、その人がいないと回らない状態を作ってしまいます。本人に悪意はなく、むしろ貢献したからこそ起きる問題です。
属人化の正体は「手順」ではなく「判断」

引き継ぎがうまくいかない理由を分けて考えてみます。
- 手順 — どのボタンを押すか、どの順番で作業するか。これは書けば伝わる
- 判断 — なぜそうしているのか、例外が出たときにどう決めるか。これが伝わらない
引き継げないのは、ほぼ後者です。「この取引先だけ処理を変えているのはなぜか」「数字が合わないときに、どこから疑うのか」。こうした判断は、手順書の形にしにくく、書かれていても読む側がその意味を理解できません。
手順書を厚くしても判断は移せない。これが、マニュアル化が徒労に終わりやすい理由です。
全パターンのマニュアル化が現実的でない理由

「例外も含めて全部書けばよい」という指示が出ることがありますが、次の3点で行き詰まります。
- 例外は無限に出る — 書き切ったつもりでも、翌月には新しい例外が発生する
- 読む側が探せない — 分厚くなるほど、必要な箇所にたどり着けなくなる
- 維持できない — 業務が変われば内容も古くなる。更新が止まった瞬間、信頼できない資料になる
結果として、作る側は消耗し、使う側は使わない、という状態に落ち着きます。
マニュアル化の負担はAIで減らせる

とはいえ、マニュアルが不要というわけではありません。手順を残すこと自体には意味があります。
変わったのは、作る負担です。以前は、手順書を書くこと自体に膨大な時間がかかりました。今は、作業の流れを言葉で説明すれば、AIに文章化させることができます。既存の断片的なメモを整形させることもできます。
「マニュアルを作る時間がない」という理由で先送りされてきた部分は、以前ほど大きな障害ではなくなっています。まずはここから着手するのが現実的です。
それでもマニュアルで解けない部分が残る

ただし、AIに作らせられるのは、あくまで手順の記述です。
判断の部分は、そもそも本人が言語化できていないことが多く、説明されないままAIに渡されることもありません。「なんとなく違和感があるときは確認している」という判断は、本人に聞いても言葉にならないのが普通です。
ここで線引きが必要になります。言語化できる判断は仕組みに組み込める。できないものは人が担当する。この切り分けの考え方は、AIがアップデートしても変わらないAI活用スキルの本質でも扱っています。
仕組み側で解くとはどういうことか

言語化できた判断は、文書に書くのではなく、仕組みそのものに埋め込むことができます。
- 入力できる値をあらかじめ制限する(間違った値を入れられないようにする)
- 条件を満たさないと次の工程へ進めないようにする
- 誰がいつ何を変更したかが自動で残るようにする
こうすると、「知っている人だけが正しく扱える状態」が解消されます。知らない人が操作しても、仕組みが誤りを防いでくれるからです。マニュアルに「気をつけてください」と書くのとは、効果がまったく違います。
1stWritingを運営する佐藤も、クラウドツールを使い、エンジニアと連携して業務に合わせたシステムを開発した経験があります。ゼロから作るのではなく、既存の土台の上に自社の判断ルールを乗せていく進め方です。仕組みを作った後の維持については、顧客管理はエクセルで限界?でも触れています。
どこまで仕組みにするかの判断

すべてを仕組みにする必要はありません。判断の基準は頻度と影響です。
- 毎日動く業務、止まると売上や信用に直結する業務 → 仕組み側で解く
- 年に数回しか発生しない業務 → マニュアルで足りる
もう一点、重要な注意があります。仕組みを作る場合も、作った人しか直せない状態にしないこと。それでは属人化の対象が、Excelマクロからシステムに移っただけになります。何をしている仕組みなのかを、関わる人が説明できる状態にしておいてください。
自動化すべき範囲の判断については、エクセルで自動化できること・できないことも参考になります。
業務の属人化に関するよくある質問

ここでは、属人化の解消についてよくある疑問へ答えます。
- 何から手をつけるべきですか?
- 担当者が辞める前提で準備すべきですか?
- 費用はどのくらいかかりますか?
- 何から手をつけるべきですか?
-
属人化している業務を1つ挙げ、引き継げない理由が手順なのか判断なのかを切り分けるところからです。手順であればAIを使ったマニュアル化で解決します。判断であれば、仕組み側の検討に進みます。
- 担当者が辞める前提で準備すべきですか?
-
退職に限らず、体調不良や長期休暇でも同じ問題は起きます。「その人が明日から1週間いなくても業務が回るか」を基準にすると、現実的な準備ができます。
- 費用はどのくらいかかりますか?
-
取り組む範囲によって大きく異なります。マニュアル化の負担を減らすだけなら、追加費用はほとんどかかりません。仕組みを作る場合は、既存ツールの活用で済むのか、業務に合わせて作る必要があるのかで変わります。
まとめ|「その人がいないと判断できない」を洗い出す

属人化は、手順を書けば解決する問題ではありません。引き継げないのは判断の部分であり、そこはマニュアルでは移せないからです。
まずは、自社で属人化している業務を1つ挙げ、引き継げないのは手順か判断かを切り分けてください。手順ならAIで負担を減らせます。判断であれば、言語化できるものを仕組みに組み込むという方向に進みます。
自社の業務をどう仕組み化するか整理したい場合は、仕組み化のご相談もご利用ください。全体の進め方は中小企業のDXは何から始める?で解説しています。
